日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





馬介在教育(学校で馬を)

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 ついに今年もこの季節になりました。

与那国島の比川小学校の秋の運動会での「馬と子どもたちの演技」、

今年もその練習が始まりました。

本番は9月18日、日曜日です。さあ、今年はどんな演技になるのでしょうか?

与那国のスタッフは寝食を惜しんで(?)頑張っています。

(写真は以前の様子です)

 

 さて「馬楽のすすめ」は金曜日は言い出しっぺの「親方の日」です。

今回も手抜きをしまして、昨年沖縄タイムスに連載しましたエッセイ「唐獅子」その7回目を転載します。タイミングよく「馬介在活動」になってました。

 

【唐獅子】その7

 

 馬牧場に吹く風に秋の気配は感じられるものの、昼間はまだ暑い。馬は本来暑さに弱い。もともと北が原産だからだ。しかし与那国馬は沖縄にやって来て以来約700年の間に、高温多湿の環境や主食となる草の種類にも順応する力を獲得した。そして、小さいが従順で辛抱強く足腰の強い馬となった。

 沖縄本島での馬の活動は馬運車で出かける乗馬会が頻繁にある。馬運車には大きな馬の絵が描かれ、とても目立つ。時々、知り合いから「おおーい!」と呼び掛けられる。先日もそうだった。その日はとある公園で、幼稚園の乗馬会。通りがかりの車が止まってこちらに手をふっている。おやまぁ、20年前に与那国に学校の先生として赴任してこられた先生ではないか。実はこの先生こそ、与那国赴任時代に学校教育に馬を取り入れた張本人だった。

 当時はまだ馬は危険・汚いと思われ、学校の授業に馬を使うなんて考えられない時代だった。ところがこの先生は赴任してきたその日から、我々の牧場を訪ね、家族で乗馬を教えてくれとお願いされた。そして小学校の生活科の時間などを使って本格的な「馬の授業」が始まった。実に画期的な出来事だった。もちろん我々は、長いことそれを待ち望んでいた。

 馬を使った授業は乗馬だけではない。工夫すれば全教科に使えるのだ。与那国馬と暮らしていた頃の話を近所の古老に聞きに行って作文にすれば、社会と国語。馬の餌を探しに行けば、植物の勉強で理科。馬の餌の分量をグラムやリットルで量って上げれば算数に、などなど。もちろん乗馬は、身体能力を高める体育に使える。

 しかし何より効果的なのが「心を育てる」ことだ。子どもたちは馬の授業を心待ちにし、実に生き生きと楽しんだ。またこの先生は、馬の教育的効果を心理学の面から実に見事に理論化してくれた。

 離島の先生の赴任期間は普通3年だが、この先生は倍にのばして合計6年間もいてくださった。そして、もう一つの偉業を成し遂げた。なんと学校に「馬クラブ」を発足させ、なおかつ運動会に乗馬演技を持ち込んだのだ。この先生との出会いで、馬の活動は大きく広がった。今年の与那国島の運動会も、もうすぐだ。

(2015・9・23)