日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





馬に恋する若者が与那国島を目指すべき10の理由 ⑦

 

f:id:hisanomarkun:20130601185729j:plain

 

理由その6 お金をかけずに馬と暮らせる

 

都会から来た旅の人に、馬と暮らしているんです、というと、「わあ、すごい、オーナーさんですね」などと言われることがあります。一瞬「?」と首をかしげますが、ああそうか、と認識の違いを思い出します。

 

現代の日本で馬を飼う、というのは、「お金がかかる特別なこと」という認識が一般的かもしれません。馬そのものも高価なのでしょうし、設備、飼養管理、運動、調教、治療などのあれやこれや。大型動物を飼うというのは、そう誰もが気安くできるものではありません。

 

でも、与那国島では、馬を養う(島の人はこういう言い方をします)のに、お金がかかると思っている人は、あんまりいないんじゃないかと思います。なにしろ島の馬は、ほとんどが野天で生きているし、食べ物はそこら中に生えている草だからです。

 

私が相棒となるカディに初めて会った日、前の持ち主だった島の人は、「このまま連れてけばいいさ」といって、カディをつないでいた縄と杭をくれました。カディは縄で編んだお手製の無口をつけていました。

 

予想外の展開に、私は呆然としながら、なんの準備もしていない家にカディを連れて帰りました。そして、とりあえず家の前の草地にカディをつなぎました。

 

島の金物屋さんで、草を刈る鎌と杭を打ち込むためのちいさなハンマー、そして牛用の鉄ブラシを買いました。ぜんぶで五千円もしなかったと思います。「島で馬暮らしを始めるための出費」はそれだけでした。その日から毎日、島のあちこちで草を刈って相棒のごはんにしました。

 

その後、私個人の想いとして、やっぱり馬は放牧で暮らしているほうがいいなあと思ったので、自分で原生林を拓いて放牧地を作りました。ですから、「最低限の出費」だけではすみませんでしたが、それでも、たぶんみなさんが想像するより、ずっとずっとお金はかかっていないと思います。土地は島の人がただで貸してくださったし。

 

そのかわり、馬とはどういう生きものか、どのような環境で生きているのか、そして、風や雨や太陽や台風など、あらゆる自然が馬にどんな影響を与えるか、そのことを深く学ばねばなりませんでした。相棒と暮らしていくうえで、それはどうしても必要でした。その知恵は、馬仲間、島の人、そしてなにより馬自身が、ひとつひとつ教えてくれたものです。

 

おもしろいなあ、と思うのは、野生の馬(に限らず生きものは)はお金と関係なく暮らしているのですね。寝床も食物も天が与えてくれますからね。豊かさってなんだろう・・・与那国で暮らしていると、そんなことをつい考えてしまうのでした。

 

初めてカディを放牧地に放した時の喜びの舞(音が出ます)