日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





バックパッカーと馬 エジプト・ギザ

 

こんにちは。与那国島スタッフのヒロです。ヨナグニウマふれあい広場(与那国島)からはマリちゃんと僕と交替で、書ける時に投稿させてもらいます。今回はヒロです。

困ったなー、何を書こうかなー。ちょっと悩んだ末、思い当たったのが、今まで旅してきた中で、こんなところで馬に乗ったよ、とか、馬がこんな風に使われてた、なんてことを、思い出せる範囲で書いてみるのはどうかと。(与那国のネタではないですが)さて何回続くかな・・・

 

第1回目は、僕が初めて馬に乗った場所、エジプト・ギザから紹介しましょう!

ギザのピラミッド、と言えば皆さん知っているんじゃないでしょうか。古代エジプトの3大ピラミッドとスフィンクスが立ち並ぶ、エジプト観光のハイライトです。

このエリアにはピラミッドをバックに記念撮影するため、ラクダや馬がたくさん飼われています。当然ラクダに乗って写真を撮ったりすると、少々ぼったくられたりするんですが、地元のエジプト人は馬を借りてピラミッドの裏の砂漠で遊んでいるんです!こちらは交渉次第では地元価格まで値切れますし、とにかく楽しい!!

カイロに住んでいた当時、イスラム圏であり娯楽も少なかった中で、この乗馬にはまってしまったのが僕の馬との出会いでした。

 

誰でも砂漠を疾走できる!今回はみなさんがエジプト観光に行った際に、ピラミッド乗馬にたどり着けるようにお伝えしましょう。(当時と変わっていなければ、ですが)

エジプトの首都カイロとギザはほとんど繋がっているといって位置関係にあります。大カイロの西の端がギザ、という感じで、カイロ中心部から市街地をとにかく西へ進むと(ピラミッド通りという街道があるのですが)ギザのエリアに入り、そして巨大なピラミッドが見えてきます。どんどん見えてきますが、まだ自分は市街地の中。ピラミッドって砂漠の中にあるんじゃなかったっけ?と、変な不安に駆られます。

しかし、ご安心を。まさに市街地と砂漠の境界のところにギザのピラミッド群はあります。有名なスフィンクス前のケンタッキーフライドチキン。本当にKFCの前の道を一本はさんで、ここまで市街地でここから砂漠、みたいな感じになっています。

 

このKFCを北の角とする一帯が、馬屋さんの多いエリアです。スフィンクスから離れ、建物の間を歩いてみましょう。馬の匂いがするかもしれない。観光エリアから住宅街のような感じに風景がシフトしていきますが、ところどころお土産物屋も入っています。この辺で馬屋とコンタクトを取りましょう。

僕は行きつけの店があったので(「ホルス」というお土産屋のアフマドさんなんですが、このエリアだけでアフマドさんは100人くらいいるはずです)ここに通っていましたが、お土産物屋が馬を持っていたり、馬専門の厩舎があったり、個人で馬を飼っていたり、いろいろなタイプがあります。彼らから積極的に「馬に乗るか?」と声をかけてくることもあるし、暑い日中はシーンとしているので、自分から「馬に乗りたいんだけど」、と声をかけたりして、コンタクトを取るのです。

エジプトでの買い物や交渉は料金設定が無いので大変!まず先方の言い値で受ける必要はありません。外国人旅行者であった場合、半額以下に値切れるはずですが、物価と照らし合わせて、何時間乗るのか、どの辺まで行くか、何が含まれるのか等、決めるところはしっかり決めて、ある程度のところで話をつけましょう。楽しくやらなきゃ!乗馬までの道、簡単に言うと、KFC周辺で「馬に乗って走りたーい」、とエジプト人に言ってみてください(笑)

 

さて、乗馬の内容なのですが、馬は大体がアラブだと思います。馬屋さんによって(料金によって)体格のよいのも出てくるし、値切りまくったりすると痩せこけた馬が出てきたりもします。ヘルメットなどは貸し出していないと思うので、どうしてもかぶりたい人はご持参ください。

大体どこの馬を借りても、若い兄ちゃんが先導して(時に少年の場合もあります)、この砂漠の縁の土産物屋エリアを南へ、時に民家の間をすり抜けるように進みます。鶏が走り回っていたり、おじいちゃんが寝ていたり、女性が食事の準備をしていたり、エジプトの庶民的な生活風景を眺めながら、そんな路地を抜けていくと、景色が突然広がります。いよいよ砂漠へ出るのです。

 

ここまで来ると背後に文明世界を残し、眼前は空と砂だけ。

蹄跡も道も何もありません。

砂丘と砂丘と砂丘。

降り注ぐ強烈な太陽。

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あとは簡単、「いくぞー」、と声がかかり、砂漠を全力疾走。

馬たちが、もうここはとにかく走る、と知っています。そして走ります。少し遅かったりすると、兄ちゃんが鞭で「パーンッ」と音を立て、無理やりにでも走らせてくれます。落ちてもふかふかの砂なのであまり心配しないで下さい。野蛮な乗馬です。

 

もう一度。視界には空と砂だけ。

砂丘の中の谷を駆け抜け、興奮状態のあなたの右手の視野に、気づくとピラミッドが飛び込んでくるのです!

なんだかこれはもう感動。ピラミッドを横目に砂漠を疾走。最高です。

 

後ろから休日の娯楽で馬に乗りに来たエジプト人の若者グループが、前からは帰途に着く一団が、奇声を上げて盗賊団の様に(必ずではありませんが)駆けてきます。

東から西へ、西から東へ、抜いたり、抜かれたり、ギザの砂漠は馬が何頭いようが決して狭くありません。

 

西へ西へ駆け上がる。

小さくなってきた3つのピラミッドが見下ろせる丘に、休憩ポイントがあります。

どの馬屋さんに頼んでも、ここまで来て帰るのが一般的なコースのはずです。まさに砂漠の真ん中に、馬と人が集い、お互いの走りっぷりを語ったり、ピラミッドを眺めたり、砂漠に沈む壮大な夕日を見つめたり。

シンプルな風景の中を風になって走り、馬と佇んで、飽きるだけ砂漠を眺めて、そんな中でしか語れない話を仲間としているカイロっ子たち。混沌の街、カイロで育った彼らにも、この空間は特別なんでしょう。

商魂たくましいお茶屋さんが廃材を焼いて沸かした、甘―い紅茶(シャーイ)や、がんばってロバに載せて運んだ氷で冷やしたジュースを売っています。これが言うまでもなく、格別。

 

じゅうぶんに休憩したら、さあ帰ろう。

東を向くとピラミッドと砂漠のはしっこ。

その奥にはギザ、そしてカイロの市街地が、赤レンガの高層住宅とビルの群れが、喧騒の文明世界が、もやの中に広がっています。

やっぱり帰りたくないなー。