日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





馬に恋する若者が与那国島を目指すべき10の理由 ⑧

 理由その7 サバイバル感覚が身につく

 

この時期になると、沖縄の人々は天気図を気にしだします。そう、台風です。なぜだか今年はまだひとつも発生していないので、そのうちすごいのがくるんじゃないかと、ちょっとどきどきしています。もういつきてもおかしくありませんからね。

 

昨年の台風21号は、国内観測史上4位の最大瞬間風速81メートルを記録したすさまじい台風でした。与那国島の住宅は、全壊10戸、半壊27戸を含む322戸が被害を受け、馬たちが暮らすヨナグニウマふれあい広場の建物もおおきく損壊しました。

 

それだけの天災だったにもかかわらず、死者・重傷者がひとりも出なかったことは幸いでした(馬たちもみな無事でした)。もちろん、幸運もあったのだと思いますが、与那国の人々の、台風に対する経験値の高さも関係しているのではないかと思っています。なにしろ台風は毎年必ずやってくるのですからね。

 

台風が来るぞーっとなったら、みな万全の備えをします。風に飛びそうなものは片づけ、窓を覆います。意外に思われるかもしれませんが、馬を建物の中に閉じ込めることはしません。コンクリートの建物だって破壊されることがあります。むしろ馬が自由に動けたほうが安全度が高いのです。与那国馬のサバイバル能力は、人間よりはるかに高いですよ。

 

台風が上陸している間は、外を歩こうなんて発想すら浮かびません。人も馬もただひたすら過ぎ去るのを待つのみです。

 

台風の大小にも寄りますが、それだけ備えていても、毎回なにがしかの被害は被ります。停電は毎度のこと。天候が荒れている間は、船も飛行機も欠航が続きます。それもあらかじめわかっているので、不便をどのように過ごせばよいか島の人は知っています。

 

日常は壊れたものを修復することから始まります。毎年壊れ、それを直し、あるいは新しくする、という繰り返しです。

 

たいへんねーと思われるかもしれませんが、このように人の思考や行動を凌駕する自然の姿を、ふだんから体感として学ぶことができるのは非常にありがたいことだと私は思っています。自然の圧倒的な力を、ある意味で段階的に体感できるわけですからね。(といいつつ、どうぞおおきいのが来ませんように、といつも祈ってもいますけど…)

 

こうしていくつもの台風を経過するうちに、非常時に起こるさまざまな可能性をシミュレーションし、それをサバイバルするための現実的な判断を、人も馬も学んでいくのだと思います。

 

こんなに建物が壊れていても馬たちは傷ひとつありませんでした。