日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





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 いつの間にか沖縄地方にも涼しい風が吹き始め、陽光の馬たちの美しいこと。

うっとりの瞬間です。持ち回りの「馬楽のすすめ」は久々の親方の登場です。

今回も昨年沖縄タイムスの「唐獅子」のコーナーに連載した「南の島の馬暮らし」の8回目を転載しようと思いますが。驚くことにこれって今年のこと? 

 

運動会の乗馬演技 

 「天高く馬肥ゆる秋」と、この原稿の冒頭を書き始めた日のこと。台風21号は9月28日に与那国島を直撃し、与那国島史上最大の風速を記録し、木々を倒し、家を飛ばし、去って行った。馬広場の小屋も飛んで行った。しかし幸いに人も馬たちも無事だった。

 南の島に生きる生き物たちは台風から身を守る術を身に付けている。馬もそうだ。馬たちは昼夜放牧で自由に暮らしているので、暑ければ木陰に移動し、風が吹けば森の中に移動する。そうは言っても、この台風は森全体を揺さぶり、隠れる所も無いはずだった。それでも耐えた。風のやんだ頃、馬たちは草原に出てきて、安堵(あんど)した。

 そんな台風の1週間前の日曜日には、僕らの活動の中で1番重要な行事があった。そう、小学校の運動会での乗馬演技の披露である。運動会で乗馬演技を演目として発表するなんて、日本でも唯一ではないだろうか。

 島には小学校が3校あり、最も生徒数の少ない比川小学校の今年の全校生徒はわずか10名。3年生以上が、週1回のクラブ活動で乗馬の練習をする。その数7名。校庭は芝生なので、乗馬には最適だ。比川小学校運動会での乗馬演技は、今年で16回目を迎えた。今回は3回のリハーサルしかできなかったが、子どもたちも必死に練習し、本番にこぎつけた。

 乗馬演技とはどんなものか? 皆さんには想像もつかないことだろう。比川小学校では、玉入れ競争や借り物競争、パン食い競走等々、運動会の演目を子供たちが馬に乗って披露している。ただ正当な乗馬演技といえば、カドリールやジムカーナである。カドリールは音楽にのって、複数の人馬が呼吸を合わせてさまざまなコースを整然と走り、人馬一体の美しさを披露する。ジムカーナバイクや車と同じく、決められたコースを時間で争う競技だ。運動会でも小学生ができるコースで実施することもある。

 運動会では毎年テーマを決めて独自の演技を考える。今年のテーマは「自分で何でもできますよ」だ。普通は飾り付けた馬に乗ってすまし顔で登場だが、今年は馬装なしの裸馬を引いての登場だった。その内容は次回までのお楽しみ。さて台風の後片付けに入ろうか。    2015年10月7日

 

 今年の運動会での乗馬演技の発表も、まるで昨年と同じように台風の襲来で、馬たちの大屋根が全壊するなどの大惨事となった。「馬楽」が「馬が苦」になりそうです。

                           親方、久野マサテル