日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





唐獅子最終回「 バトンを次世代に」

 暖かな日差しの中、今日もやって来た子供たち。

今日は「馬さんこれ食べるかな~?」もう何年も来てる幼稚園、これだけ来てるとただ体験乗馬だけでなく、テーマが生まれました。みんなおうちからいろんな野菜を持って来ました。さてさて・・・

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 結果はともあれ、導入部の次はいよいよ乗馬です。今日は丸馬場で・・・実は乗馬の前に子供たちは丸馬場で走ったり止まったりエトセトラのウォーミングアップをしてます。これがいいのです! だって乗るのは短時間、待ってる時間がほとんどですからね。


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 そしてプログラムが終わっての時間ですが、皆馬から離れようとしません。先生は早く帰りたいようですが、僕は先生に耳打ちします「終わった後の姿が今日の成果ですよ」と。

 

 *さて今日の「馬楽のすすめ」は沖縄タイムスにシリーズで寄稿したものの最終回です。

今日は最終界に名づけて「バトンを次世代に」

 

 沖縄にもようやく本格的な寒さがやって来た。馬は決まって風上に尻を向け、風を避ける。今日の馬たちの尾は北に向いている。

 30歳で思い立ち与那国島に渡り、以来35年間、与那国馬と暮らしている。馬の「う」の字も知らないで。一頭の馬と向かいあい、鞍(くら)もない裸馬で野を駆け、浜を走った。しかも一本のロープだけで。10年もそうしていると、馬の声が聞こえる気になって来た。

 ある日、競馬界の「王貞治」と呼ばれ、数々の新記録を打ち立てた元騎手・岡部幸雄氏が与那国島に来られ、お話をする機会があった。10年ほど前の話だ。恥ずかしい限りだが、競馬を知らない僕は、そんな方とは知らずにヨナグニウマの話を自慢げに延々と講釈していた。無知は怖いものだ。

 しかしそれがよかったのか、岡部氏はその後、ヨナグニウマと我々の活動に興味を持ち、ヨナグニウマの魅力をさまざまな機会に発信してくださっている。この秋には「岡部幸雄の「Life with horses」と言うテレビシリーズでヨナグニウマに関わる沖縄の三つの牧場を取り上げてくださった。南城市にある牧場をはじめ、久米島石垣島にも、与那国のうちの牧場で働いていた若い人たちが独立して、ヨナグニウマを中心に据えた牧場を開いている。ヨナグニウマをあらゆる方面で活用し、保存に貢献しようと頑張っている若い仲間たちだ。

 先日その久米島馬牧場が発起人となって「ヨナグニウマの未来を語る会」を開いてくれた。仲間の三つの牧場はもちろん、沖縄本島でヨナグニウマを飼っている方々、ヨナグニウマに関わるボランティアをしている方々、なによりヨナグニウマが大好きな方々が明け方まで熱く語り合った。

 僕のヨナグニウマとの35年間は孤軍奮闘だった。この夜、僕はヨナグニウマのバトンがしっかり次世代に引き継がれたのを見た気がした。それぞれが知恵と技術と情熱を出し合えば、ヨナグニウマたちの未来は明るいだろう。

 「馬好きは馬に聞け」。物言わぬ馬においしい草をせっせと運び、物言わぬ馬の背に揺られ、物言わぬ馬の身体の汗を拭き、つかの間馬の瞳を覗(のぞ)き込む時、答えはすべてそこにある。この馬と言う不思議な生き物よ。 

(了)