日本最西端の与那国島で一人と一頭から始まった南の島の馬暮らし。
そこに集まった馬好きな若者たちが沖縄中に散らばり、
それぞれの馬暮らしを始めています。





喜び

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ああ、台風が来ない夏。

久米島からご無沙汰してしまいました。

台風が来たら休もうと思っていたら、全く来なくて8月が終わってしまいました。
怒濤の8月、担当の日曜日があれよあれよと過ぎて、3週もお休みしてしまいました。ごめんなさい。

毎日人も馬も歩いています。

今日は馬飼いの喜びについて書きたいと思います。僕たちが共に働く在来馬たちは今、決まった仕事をするために生まれてくる存在は稀です。

ほぼ野生状態で自然放牧のまま一生を過ごす馬もいれば、人と共に暮らすことになる馬もいます。仕事はせず飼われている馬もいれば、様々な仕事を課せられる馬もいます。

僕達久米島馬牧場にも、色んな経歴をもってやって来た在来馬たちがおります。

共に生きる僕達と馬たちは必ず一緒に仕事をします。

そのなかでも鹿児島から来たトカラ馬のハナという1頭の在来馬がいます。

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彼女は鹿児島大学の農場から3年前にやって来た女の子です。ほぼ自然放牧の状態から人のもとに移り、人に馴れずに輸送を経験し、触ることも出来ない状態できた在来馬でした。

自分達も子育てに追われ時間が無かったこともありますが、自分達らしくゆっくり育てていこうねと沢山の方に関わってもらいながら、気付けば3年が経っていました。

そのハナが今年まだまだどきどきですが、浜のお仕事に長距離外乗にデビューしています。

与那国をはじめ、在来馬の故郷では決まった仕事をするために生まれてくる馬ではない馬たちが沢山いるからこそ、馬と人との距離が遠いところから始まる場合が多々あります。

でもそこから感じられること、得られるものはかけがえの無いものです。

親方の「馬のことは馬に聞きなさい。」という言葉を胸に、毎日悩み、泣き、笑い。蹴られ、噛まれ、落とされ。すこしづつ縮まる距離を感じながら信頼関係を築く。そこに馬飼いの喜びがあると感じています。

そして、共に働いたその日、その全てが思い出され思わず全身で愛撫してしまう自分がいます。

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久米島馬牧場 井上福太郎

至福のトキ

楽しいときや面白いとき

幸せだな~って感じるとき

わたしたちは笑顔になったり声に出して大笑いする。

ぴょんぴょん飛び跳ねガッツポーズ!

くしゃくしゃの笑顔や、ほわ~んとした安堵の表情。

 

馬は・・・??

 

人のようにハッキリ分からないけれど

同じように楽しい!が伝わってくるときや幸せな様子を感じるときがある。

 

そんな瞬間がダイスキだ。

 

 

海から出た後のダイナミックな砂あび!

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これでもか!ってくらいやる。

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たのしそう(笑)

 

おいしい草を口いっぱい食む。

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 しあわせ~!

 

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並んでゴクゴク。

 

お腹いっぱいで眠くなってゴロリンチョ。

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ひとりでだって遊ぶし・・・

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自由だ!

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面白そうなところには怖いもの知らずにズンズン行く。

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わくわく。どきどき。

一緒に海へ!

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 つめたくって気持ちいいなぁ~

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 前肢だけで立って後ろ足ぷかぷか~♪

(このポーズはハルのお気に入り 笑)

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 へっへっへ~

 

お客さんに洗ってもらってると

あっそこそこ!もっと掻いて!

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 掻かれるの大好きなんだよね。

 

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おれたちだって色んなカオしてんだぜ!

 

こどもとウマの可能性3 ウマがつくる小さなコミュニティ

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 時が経つのは早すぎますね。前回投稿してから、もうひと月! 
 感覚的には、1週間ぐらいな感じなんですが(-_-;)  
 今は大学から実習生が来ているので、少し現場を離れられて一息です。  
 
 さて、こどもとウマの可能性について、またその発展形について、
今回もツラツラと、とりとめもなく。  

 与那国時代からの日曜町民乗馬教室、比川小学校の馬授業や馬クラブ、と
やってきて、本島に来てからも「沖縄こどもの国」で初の馬クラブを
立ち上げました。ちょうど10年前ぐらいかな?
 
 南城市に引っ越してからもこの馬クラブは続いていて、遠くは那覇
浦添からもずっと通ってきてくれています。新しい子もずいぶん入りましたが、
古い子はもう10年も続けていることになりますね。素晴らしいことです。
 
 馬クラブは小学生の中学年・高学年が対象(馬もちっちゃいしね)なのですが、
中学になっても続けたい子が多く、小学生から参加している子は、中2までは
希望により続けてもいい、ということになってます。
 中3になったら受験もあることだし、ひとまず引退。その後は馬クラブの
ボランティアさんになります。OBボランティアさんですね。
 今のところ、OBで定期的に手伝ってくれるのは2,3名。もうみんな、
高校生です。女の子は小さい子たちの面倒をよく見てくれて、男の子たちは
ペンキ塗りや施設の修繕、畑作業も手伝ってくれたりと、とても助かっています。

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 みんなここの場所が好きで、寮生活やアルバイトで忙しくしていても、
来られる時には顔を出してくれます。引っ越して遠くにいってしまった子を除いて、
卒業生のほぼ全員がOBで手伝ってくれているのは、スタッフにとってとても
嬉しいことなのです。
 
 このクラブのもう一つの特徴は、参加の子供たちだけでなく、家族も一緒に
遊べること。 参加者の小さな兄弟たちも、猫や犬、アヒル、ヤギ、鶏と、
牧場という環境のなかでワイルドに遊びます。親御さんたちも、時間のある時は
こうした兄弟たちの面倒を見たり、草刈りを手伝ってくださったり、親御さん同士で
情報交換をしたり子育て相談をしたりと、和気あいあいとそれぞれの時間を
楽しんでいます。
 

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 この小さなコミュニティが、数少ないスタッフを支え、間接的に馬たちも
支えてくれているのです。こどもとウマが中心の馬クラブではありますが、
そこから子供たち兄弟、家族、また家族同士へのつながりへと発展していきます。

 このコミュニティには時折、いわゆる「旅の人」という外部からの刺激も
入ってきます。内地の大学から来る実習生、世界中から来るウーファーたち、
また競馬など馬の世界で活躍している人たちです。
 こうした「新しい人」が入れ代わり立ち代わりやってくるので、
子供たちには必ず自己紹介をしてもらいます。この自己紹介、最初はみんな
蚊の鳴くような声でボソボソしゃべっていたのですが、この頃はとても
こなれたものになってきました。多い時期は毎週のように新しい人がやってくる
ので、当然ですね(^_-)-☆ 

 ヨナグニウマ、という馬がいるからこそ、こうした刺激も子供たちに与えられる
のですね。馬が人を呼び寄せ、こうしたダイナミックなコミュニティまで
つくってしまう力は、ホント、すごいと思います。

 さて、ここまで書いて、もう瞼が重くなってきました。
 夏場の肉体労働者は、夜はなかなか頭がまわりません(*_*;
 とりとめもないブログ、失礼しました~。
 この続きは、また今度!

 

 うみかぜホースファーム

 なんちゃって場長、ヒメこと中川美和子 でした。

二世代目助っ人

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 南に住む馬たちにとって夏は過酷だ、そしてスタッフ達にも。
しかし我々は発見した、海の中での乗馬を。人も馬も海の中で「きもちいい!」

 しかし今年は来ませんね台風。発生してもほとんどが本州ですね。
なおのこと気になります、でかい台風が来るのではないかと。
思い出したくもありません与那国島を襲った去年の台風・・・。

 読者の皆様、残暑お見舞い申し上げます。
睡眠一番!早寝早起き朝ごはんでどうぞ乗り切ってください。

 長らく投稿をお休みしてました、金曜日担当の親方です。
人生休まること有りませんね、もう僕は身も心もボロボロです(ちょっとオーバーかな?)。でも薄暗い明け方から浮かび上がる馬たちを眺めることは、本当に癒されます。皆様も一度は体験しませんか?

 さて「唐獅子」その6、題して「二世代目助っ人」

・・・・・


 一頭のヨナグニウマから始まった馬暮らしは、気が付けば頭数も増え、ヨナグニウマの保存と活用を目的にした民間非営利団体となり、スタッフも数人抱えるようになった。そして7年前には沖縄本島にも活動拠点を持つに至った。しかしここまでになったのも、実は「助っ人」と呼ばれるボランティアのおかげだ。その数はこれまでで、のべ二百人、三百人、いや、もっとかもしれない。当初は牧場作りのための荒れ地の伐採をやり、未調教の馬に乗ったり、かなりワイルドな生活だった。それでもみんな元気いっぱいに楽しんだ。
 そんな助っ人の中の一人で、飛び切り好奇心に満ち、元気な女性がいた。ある日、畔の草刈りをしていたら、突然「ぎゃぁ!」と悲鳴が聞こえた。切り倒したクワズイモを舐めたのだ。クワズイモには猛毒がある。あまりにも白くて美味しそうだったから舐めたと。病院に連れて行ったものの、口から喉にかけてただれ、辛そうだった。それから何日も、涙を流しながらご飯を丸のみする過酷な日々があった様に記憶する。
そんな彼女も島を出て結婚。助っ人時代から一五年が過ぎていた。そしてこの夏休み、中学生になった彼女の子供が「助っ人二世」として沖縄本島の牧場にやって来た。
 友人と二名でやって来た「助っ人二世」は、牧場で2週間過ごした。「職場体験」という目的での滞在だったので、容赦なくスタッフと同じか、それ以上に働いてもらった。朝はラジオ体操で始まり(おやおや、今の子はラジオ体操も知らないぞ!)馬の世話、草刈、海でのお客様乗馬の手伝い(主に馬糞拾い)。その後には、時々馬から鞍を下ろして、裸馬に乗っかってのお楽しみ乗馬。何を教えるでもなく、ただ浜を走らせた。
 そして夕食。一緒に作って、一緒に食べて語り合って、疲れて寝た。時には僕の雷も落ちた。似てる似てる、彼のしぐさ、考え、顔つき、母にそっくり。
馬に尽くす労働は、人の心の奥底にくっきりとした蹄跡を残す。さて彼の子が「助っ人三世」として来る日まで、馬暮らし頑張るとしよう。

 *これは昨年の9月9日付の沖縄タイムスの「唐獅子」のコーナーに記載されたものです。それからちょうど1年、この若者は中卒で沖縄よりもっと南の島に旅発った。なんだか楽園の島があるらしい。いいなー、俺も行きたい。

はじまり

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あれまあ、という早さで8月になり、日曜日になりまして。
久米島馬牧場からサノちゃんです。

相変わらず台風が来ない夏。
海も山も煮えたぎっています。
雨は降るものの…
やはり台風による洗濯がないので何かが滞っている雰囲気。
来るのも困るが、来ないのも困る。台風。

さて、ブログ何書こう~?
と思ったところで、そもそもブログを書き始めたのは?と思い返してみたところ。

初めて書いたブログは、JTAの『美ら島物語』でした。
与那国へ移り住んでしばらくした頃、親方マークンとヒメさん(今は本島うみかぜホースファームの場長さんですね)から、「やってみないー?」と提案されたのがキッカケでした。
そこから始まり、与那国の広場のブログを書くことになり、久米島へ来て自分たちの日常を綴ることになり。

今では日課のようになりましたが、当初は何書こう?どうしよう?!の連続でした。
そんなとき(今でもですが)いつも指針としてきた親方の言葉。
「写真一枚。言葉ひとつ。何か伝えたらいいよ」

自分が面白がれること、心動かされたこと。
忙しくて疲れることばかりの毎日の中で、ちょっとでもそんな瞬間を見つけられるか。
そう心に留めて暮らすこと。

親方から教わった、私の大切にしたいことのひとつです。

出来るとも思わない、得意とも思っていないことを、いつもマークンに挑戦させてもらい、誉めてもらい、正してもらい…また先に進ませてもらい。
そんな繰り返しで育ててもらいました(笑)

そんな教えの数々を(私の勝手な解釈で)紹介していく連載にしようかなー。
と思案中(笑)

適材適所

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7月もあっと言う間にもう終わり。相変わらず台風が全然来ないのでギンネムがぐんぐん成長している久米島です。

8月はどうでしょうか。

ありがたいことに、毎日暑い中忙しくさせていただいております、久米島から久米島馬牧場の井上福太郎です。

以前少し書かせて頂きましたが、このブログをリレーしているメンバー。皆でつながったヨナグニウマアライアンスという同盟をつくった理由をお話ししたいと思います。

これは、特に組織のように固まったものではない、ふれあい広場の理念やヨナグニウマに対する想いを共有するメンバーのゆるいつながりです。

このアライアンスをつくりたいと思った理由は大きく2つあります。

一つは昨年の与那国島を襲った大型台風の被害。

僕達各島に散らばった馬広場の面々は、一つ一つはまさに吹けば飛ぶような小さな牧場です。また、いつこのような自然災害やその他存続が危ぶまれる事態に直面してもおかしくありません。

そんな時にお互い助け合えるようにしたいという思いから。

そしてもう一つは、馬や人の適材適所の実現と活躍の可能性の幅を広げるためです。

かつて馬社会であった時代。今のような垣根のない流通が不可能な中で、その土地で生まれた馬たちは非常に多様な役割がある場所にいて、色んな個性の馬たちが活躍していました。我々が愛するヨナグニウマも小さな島ながら沢山の役割の中で沢山の個性が輝いていたはずです。

しかし、馬たちの仕事に多様性がなくなってしまった今、そして垣根のない流通が実現し代替することが非常に容易になった今、その個性や、個体をぞんざいに扱いがちになったり、また、そこに大きな無理を生じさせながら共働することになってしまいがちです。

与那国島で産まれるふれあい広場産だけではない与那国馬達、本当に色んな素晴らしい個性があります。本当に面白い馬達が沢山います。

そんな溢れる個性がなるべく無理なく活かされるように。そんな願いを少しでも実現出来るよう、このアライアンスの中の各広場で多様な活躍の場をつくりたいとの思いがあるのです。

そして初の試みの中、久米島にやって来た溢れる個性が開花しています。
写真の海の中で寝そべるイース。うちの他の馬は絶対にやりません(笑)。

この個性、仕草。一気に先人達の人気ををごぼう抜きにするインパクトです(笑)。
今後もいつも皆を笑顔にしてくれると思います。

そして、他の広場に移った馬達のその後にも思いを巡らせています。

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馬に恋する若者が与那国島を目指すべき10の理由 ⑩

 

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長々と続けてきたこの連載、ついに10回目となりました。1回目をまえがきで費やしてしまったので、最終回はまとめて2つの理由を書きたいと思います。

 

理由その9 多様性を受け入れる文化がある

 

ここまでお読みになった方には、「広場」が、馬に関して様々な考え方や経験を持った人々が行き来する不思議な場所であることがおわかりいただけたと思います。

 

私がすばらしいなあと思うのは、多様な価値観が否定されることなく、同時に存在できる文化があるところです。私が知っている限りでも、親方はじめ歴代のスタッフは、みな馬に対するアプローチがちがいます。それぞれの個性や馬との関わり方を、おたがい尊重しあっているのだと思います。

 

なんといっても、このへそまがりの私(とカディ)が参加させてもらえているのですから、どれだけ寛容な文化かわかるというものでしょう。私とカディの関係は、経験者からすれば、はらはらするところも多分にあると思うのです。それでも「そう思うなら、やってみたら」というスタンスで見守ってくれる。むしろおもしろがってもらえるようなところもある。で、助言を求めたら、その時には惜しむことなく与えてくれる。お互いの意見をフランクにシェアできる。そういう開かれた場って、なかなかないと思います。


理由その10 ジレンマや違和感と向き合える

 

10番目は、さまざまなジレンマや違和感と向き合える、ということです。最後を飾るには少々ネガティブな理由に聞こえるかもしれませんけれど…。

 

たとえば、与那国で暮らしていると、野生に生きる馬と、人間と暮らす馬を前にして、「馬にとって本当はどちらが幸せなんだろう」と考え込んでしまう瞬間が一度は訪れると思います。これって、乗馬とか調教よりずっと手前にある、馬と人間が関わることについての「そもそも」の問いです。正解を答えることができない問いです。

 

でも、馬は目の前で生きています。だから、「こうしよう」という自分なりの答えを出して、今日という日を過ごしていくほかありません。(たぶん明日はすこし違う答えになるでしょう)

 

これは一例にすぎません。与那国は、離島であるおかげで、スピードや効率やマーケティング中心の社会から、ちょっと守られている部分があります。また、国境の島でもありますから、世界を感じやすい位置にあります。危機感もあります。日々の暮らしはシンプルなのですが、なにかと考えさせられることが多いのです。

 

これからの未来は、きっと「多様性」がキーワードになっていくでしょう。ジレンマや違和感って、重くてやっかいなものではあるけれど、未来を育んでいくための大切な種なんじゃないかと思います。ジレンマや違和感を「ないこと」にせず、きちんと向きあったら、人と馬の未来もやさしさにあふれたものになるのじゃないかなあ、そうだといいなあ、と私は思っています。

 

 

この連載は、これでおしまいです。長い間、おつきあいいただきありがとうございました。

 

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馬たちも多様性に満ちている!

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